750SS H2 エンジンオーバーホール

カワイモーターサイクル

2018年12月29日 20:49

 ブログをご覧いただき有難うございます。静岡県浜松市東区でオートバイの販売・修理・車検・カスタムをしている【カワイモーターサイクル】です。全ての作業は整備士の資格を持った代表がおこなっております。

 今回は「カワサキ 750SS」のエンジン分解整備について紹介します。点検項目が多い為、部分ごとの簡単な説明になりますが、当店に修理を依頼して頂く場合に参考にして頂ければ幸いです。


出先で突然にシフトペダルの操作感が悪くなり、変速ができなくなったということで修理の依頼をいただきました。お客様と相談した結果、今回の不具合以外にも始動性の悪さやオイル漏れなどの症状があり、安心して乗れるようにしたいという要望でから、エンジンを分解整備することとなりました。



まずはフレームからエンジンを降ろしますために外装、キャブレター、マフラーなどを取り外します。



エンジン内部にゴミが侵入するのを防ぐため、分解前に外側を清掃しておきます。





フレームを傷をつけない為に養生し、部品を取り外していきます。




フレームからエンジンを降ろしたらクランクケースを分割し、中の部品を取り外していきます。


まずはクランクケースの点検をします。



クランクケースを洗浄し、損傷が無いか点検していきます。



シリンダースタッドボルトの錆が酷かったので、交換させて貰うことにしました。



お客様の要望でクランクケースはウェットブラスト仕上げとしました。



ケース合せ面を軽く修正し、新品のスタッドボルトを取付けたらクランクケースは完成です。


続いてクランクシャフトの点検をしていきます。


クランクシャフトは清掃後に損傷や振れなどを点検します。



振れは基準値ギリギリだったのですが、お客様と話し合った結果、不安無くオートバイに乗るためにコンロッド、ベアリング、オイルシールを新品に交換して芯出しをすることになりました。オイルシールはお客様が用意していた非接触のラビリンスシールを選択しました。コンロッドもお客様からの持込みです。





部品交換、芯出しを終えたクランクシャフトも念のため振れや隙間を確認します。振れは基準値内に収っていました。確認後、両端のオイルシールを新品に交換してクランクケースに取付けます。


続いてミッションギアー廻りの点検をしていきます。


まずはアウトプットシャフトから。分解して洗浄しながら損傷や摩耗がないか点検します。




点検が終わったらベアリング、サークリップを新品に交換し、シムで隙間を調整しながら組立てていきます。



インプットシャフトも同じように点検し、組立てます。


続いてシフター廻りの点検をしていきます。


リターンスプリングが折れていました。変速に不具合がでたのは間違いなくこの部品の損傷が原因です。スプリングは新品に交換します。


目視での点検が終わったら分解し、洗浄しながら損傷がないか点検していきます。心配していたシフトフォークの状態は良好でした。


シフトフォークのガイドピン、シフトシャフトはお客様の予備部品があったので新品に交換しました。


続いてキックシャフトの点検をしていきます。


キックシャフトも分解して洗浄しながら点検していきます。


ギアの摩耗が酷かったので、お客様が用意していた予備の部品と交換することにしました。



点検が終わったらスプリング、クリップなどを新品に交換して元通りに組立てます。スプリングに損傷はなかったのですが、お客様が予備部品として用意があったので交換させて貰いました。



トランスミッション、キックシャフトの点検が終わったらクランクケースに取付け、オイルで潤滑しつつ作動を確認します。





作動に問題が無ければナット、ワッシャー、オイルシールなどを新品に交換し、クランクケース合せ面に液体パッキンを塗ってからケースを閉じます。閉じた後、クランクシャフトが円滑に回るか確認します。



クランクケースを閉じたらフレームに搭載します。


続いてクラッチ廻りを点検します。


他の部品と同様に、洗浄しながら点検していきます。


プレートの間に収るスプリングの破損以外に問題はありませんでした。この部品もお客様の予備部品と交換しました。




点検が終わったらOリングやロックワッシャーを新品に交換して組み付けていきます。プレートプッシャーはお客様が用意したベアリング入りの物に交換しました。



右側のエンジンカバーを取付ける前に、部品を洗浄しつつオイルポンプとタコメーターのドライブギア廻りを点検します。



タコメーターのドライブギアのシャフトには錆による損傷がみられたので、リプロの新品部品と交換しました。


点検が終わったらガスケットやオイルシールを新品に交換してカバーを取付けます。取付け後にギアオイルを入れます。





コイル廻りも分解して清掃し、配線の損傷やコイルの抵抗値などを点検してから組み付けていきます。


続いてオイルポンプ廻りの点検をしていきます。


まずはボンプ本体から。分解して洗浄しながら点検していきます。



点検が終わったらシール類を新品に交換して元通りに組立てます。



デリバリーパイプも分解洗浄し、チェックバルブの作動を点検しておきます。シールワッシャーは新品に交換します。




オイルタンクは内部を洗浄し、フィルターとホースを新品に交換させて頂きました。




点検が終わったらオイルポンプを作動させ、吐出状態を確認してからエンジンへ取付けます。


続いてシリンダー廻りの点検をしていきます。



ピストンとシリンダーの内壁には縦傷がついていました。



洗浄後にシリンダーとピストンの寸法を測定します。シリンダーは摩耗により寸法が基準値を超えていました。


お客様と話し合った結果、シリンダーをメッキシリンダー化してSTDサイズのピストンを組むことになりました。純正未使用のピストンセットはお客様にご用意頂きました。




新品のピストンは丁寧にバリを削り、ピストンリング、ピストンピンと共にWPC処理を施しました。この処理により摺動性、疲労強度、摩耗特性が向上します。




こちらがSTDサイズピストンに合わせてメッキシリンダー化加工したシリンダーです。ポートにブリッジを設けることで耐久性を向上させました。また、ポート形状はH2の初期と中期のいいとこ取りとしました。





加工が完了した後は各部品を洗浄してから寸法を測定し、ピストンやリングの隙間が適切かどうか確認します。加工精度は間違いありませんでした。





シリンダーヘッドは洗浄してから損傷が無いか点検し、ウェットブラスト仕上げとしました。



点検が終わったらピストンを組み付けていきます。







シリンダーはエキゾーストスタッドボルトやガスケットを新品に交換して取付けます。



シリンダーヘッドはスタッドナットとガスケットを新品に交換してとりつけます。




エンジンが組み上がったら点火タイミングを調整します。そして、スパークプラグを新品に交換して元通りに部品を取付けていき、キャブレターや各ワイヤーなどを調整したらエンジンを始動させます。



最後に点火タイミングとキャブレター微調整したら作業は終了です。あとは実際に走行して不具合が無ければ作業完了となります。


ピストンサイズ変更などに伴うエンジン環境の変化により、キャブレターのセッティングが必要になりました。

 今回の整備での部品代と作業代は下記のとおりです。

  アルミメッキシリンダー化加工・・・¥305,000(税抜)
  クランクシャフト分解・組立・芯出し・・・¥80,000(税抜)
  ウェットブラスト処理・・・¥56,000(税抜)
  ピストン廻りWPC処理・・・¥30,000(税抜)
  部品代・・・持込部品多数のため不明
  作業代・・・¥233,000(税抜)

 当店では日ごろから明朗会計を心掛けております。まずは詳細な見積書を作成し、その内容を分かるように説明いたします。そして必ずお客様に納得していただいてから作業に取り掛かります。見積りは無料ですので気軽にご相談ください。

 走行が困難または不能で当店までオートバイを持ち込むことができない場合、トラックで引き取りに伺うことも可能ですので気軽にご相談ください。

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